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米国税法改正大綱 「Unified Framework」(3)

前回はは米国税法改正大綱とも言える「Unified Framework」の全体のテーマ、現状35%から20%と劇的に低減される法人税率、そして個人オーナーに配賦されるパススルー所得25%特別税率を中心に触れた。今回も引き続き法人税および事業所得に対する課税について、特に設備投資減税と支払利息の損金算入制限に関して触れてみたい。

前回触れた法人税率20%だけど、これは先進国平均22.5%よりも低く設定され、米国の投資先としての魅力を高めるとしている。実際には連邦法人税と並び米国には州税があり、配賦比率とか個々のケースで大きく異なるとしても州税の実効税率はザックリ5%程度に終焉することが多く、連邦・州合計では税率は25%程度になるケースが多い。ちょうど、日本でタックスヘイブン税制が見直されているタイミングなので、日本企業の米国子会社各社の実効税率が税法改正後、何%になるのか親会社側としては気になるところだろう。

法人税率低減は民主党は取りあえず反対を表明しているが、経済界は当然大歓迎で、中でもオバマケア廃案議論または今日に至るまでの税法改正議論の過程で発言権および影響力を強めてきたFreedom CaucusやKoch Industriesのサポートは特筆に値する。ただ、企業にとっていいこと尽くしかと言うとそうでもないケースもあり、米国連邦税に関して繰延税資産を計上しているケースでは資産が, 改正と同時にある日急に4割強も目減りしてしまう。そんな状況に晒されている事業体は課税所得の前倒しとか改正前9回裏ギリギリのプラニング検討がMustだろう。

代替ミニマム税(AMT)の撤廃だが、面白いことに個人所得税に関しては撤廃と言い切っているのに対し、法人税に関しては撤廃を目指す(「Aimする」)と少し腰が引けた感じで記載されている。Big 6内で完全にUnifiedできなかったか、財源のことを心配して逃げ道を残しているのか不明だけど、いずれにしてもこの際一気に撤廃してもらいたいものだ。

次に注目度の高い設備投資減税だけど、The Blueprintでは有形、無形を問わず事業資産は土地を除き全て取得時に費用化という提唱だった。The Blueprintによるこの大胆な提案は設備投資減税の側面も当然あるものの、課税所得の算定を完全にCash Flowベース化し、かつ一部で評判の悪かった例のBorder Adjustment、すなわち消費地課税と組み合わせることで法人税を限りなく消費税やVATに近づけるという意味が大きかった。消費地課税の方はUnifiedできずに廃案としておきながら、納税者に受けのいい設備投資減税の部分は残している点、税法改正はテクニカルな世界では一切なくあくまでもポリティクスにより事が動いていくことが良く分かる。

Unified Frameworkに対する第一印象のところで触れたけど、Frameworkは法の発効日とか施行日には一切触れていないにもかかわらず、設備投資減税に関しては2017年9月27日(Framework発表の日)以降に適用と細かく規定し、さらに当措置は少なくとも5年は継続するともわざわざ記載して時限立法っぽい方向を示唆している。これはおそらく設備投資の100%費用化はあくまでタイミング差異の話しなので、経済浮揚効果を最大限化するには、一日も早く投資を始めてもらい、しかも時間制限を設けることで、比較的早期5年以内に先行投資させる意図であろう。

対象となる資産は建物を除く償却資産(Depreciable Assets)とされている。正確に何を意図しているのか分かり難い。税務上は「Depreciable」という際、「Amortizable」の資産も含まれると解釈される局面もあり、有形資産のことだけを意味しているのか、それともSection 197償却対象となる無形資産をも含む意図があるのか文面からは必ずしも明確ではない。ただ、「New Investment」と言及されていることから、最初に読んだ際の印象としては建物を除く有形の動産を対象としているように見え、無形資産はテクニカルにはDepreciable Assetsでかつ動産ではあるけれど、Goodwillとか通常は他者が創造したものを取得することで簿価が発生することから新規投資とは言えず、Frameworkの意図する対象ではないように思えた。今後、法原文の作成過程でより明らかとなっていくだろう。

Frameworkによるこの設備投資減税はスコープ、対象期間共に前代未聞のスケールであり、税法をドラフトする議会は更なる強化を試み、「中小企業」の後押し努力を惜しまないと自画自賛している。なぜ設備投資減税が大企業と比べて中小企業により大きな助けとなるのか良く分からないけど。

次に激しいロビー活動の矛先が向けられていた支払利息の損金算入の動向。The Blueprintでは事業体、個人を問わず事業目的の支払利息の損金算入は全面撤廃とされていた。これは法人税のVAT化に準じてある意味当然の方向ではあったかもしれない。一方Frameworkではこの点に関して何とも歯切れが悪く、C Corporationによる支払利息は一部損金算入を制限するとのみ記載している。例えば金融機関なんかもC Corporationのケースがほとんどだと思うけど、金融業で支払利息の損金算入が制限されてはビジネスが成り立たないんじゃないか、とも思え、結局はいろいろな例外が規定されることになるのだろう。また、グループ金融会社も同様だが、銀行ライセンスを持っていないグループ会社は銀行と比べると例外対象となる確率は低いようにも思われる。Capital Structureの大幅変更を強いられるケースも予想され、十分な導入期間の設定が期待されるところだ。制限が条文化されると例のDebt/Equity Classification(俗に言う過少資本)を規定したSection 385の膨大な規則も用無しとなり、自然消滅の憂き目にあう可能性もある。また、一般企業が金融機関から受ける融資に対して支払う利子の損金算入に制限が加えられることになると、ファイナンス法としての魅力が低下することとなり、今後この規定を巡っては銀行が猛反対してくるだろう。

C corporationによる支払利息の損金算入制限だけど、具体的にどのような方法で制限してくるんだろうか。トランプ大統領案では元々、設備投資の一括費用化と支払利息の損金算入が選択制だったが、今回の「制限」というのは、設備投資の一括費用化メリットを取る際に適用されるような仕組みになるのだろうか?設備投資減税が選択制という書き方ではないのでこの方向はないように思える。もう少しあり得そうな方向は、一定のDebt/Equityレシオを超える負債に対する支払利息の損金不算入とか、例えばAFR、またはAFRの120%までとかIRSが指定する利率を超える部分を損金不算入にするとか、だろう。

C Corporationに対する扱いも曖昧だけど、それ以外の事業主による支払利息の損金算入可能性に関しては更にオープンエンドだ。FrameworkではC Corporation以外の事業に関しては議会が適切なアプローチを検討するとだけしている。どのような制限が規定されるにしてもロビー活動をさかんにしていた農業、Frameworkが繰り返しサポートを強調している中小企業は制限免除の可能性もある。

今回はこの辺で、次はR&Dその他クレジット等に関して。