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米国税法改正案「Tax Cuts and Jobs Act」(8)「上院も本会議可決(AMT廃案取り下げ)」

Max Hata
今日12月1日夜中過ぎ、上院は数日の駆け引きを経て税法改革法案を51-49で可決した。多数党院内幹事のJohn Cornynらは金曜日朝から可決に要する十分な票を集めたと自信を見せていたので驚きはないけどやはり実際に可決してみるまでは分からない際どいプロセスだっただけに共和党指導部は一安心だろう。下院は先に独自の法案を可決させているので、後は両院一致法案にまとめたものを両院で可決し、大統領の署名という流れとなる。もちろんこれらの手続きがスムースに行くという保証はないが、以前から散々触れている通り、オバマケア廃案に失敗している以上、ここで税法改革も通せないとなるとそもそも何のために与党をしているのかという基本的な疑問を呈されることとなり、可決に対する共和党議員のインセンティブは大きい。

それにしても上院財政委員会を通過した後の水面下での政治交渉は熾烈を極めていた。そのプロセスは議会が休会していたThanksgivingの週も24/7で行われたいたはずだ。

Thanksgivingに突入するタイミングでは複数の潜在的な造反議員が存在していた。何といっても共和党は上院過半数を押さえているとは言え、52議席しかない。100議席の上院を多数決で通すには、ペンス副大統領のCasting Vote(可否同数の場合の決裁権)を考えても3人造反が出てしまうと全てが水の泡と言う際どいところにある。そんな首の皮一枚の状態で、反対票を投じる可能性のある議員が複数いたのだからその説得は慎重かつ熾烈を極めただろう。

潜在的な造反者の反対理由は複数あるが、大別すると法人税が35%から20%に低下するのに比べて小規模事業主に対する手当が十分でないとするRon Johnson、Steve Daines、財政赤字を嫌ういわゆるDeficit Hawk派のBob Corker、Jeff Flakeそして上院案に追加されたオバマケアの一部廃案規定を嫌うSusan Collins、Lisa Murkowski、法制化プロセスの透明性を重要視するJohn McCain、そして予見可能性の低いRand Paul、となる。

まずSch. Cで報告する自営業を含むパススルーから所得を得る個人事業主に対する税負担軽減が法人税低減に比べて十分でないとするRon Johnson一派。Ron Johnsonはこの点を理由に真っ先に法案に反対という態度を表明して世間を驚かせていたが、下院議長でもあり今回の税法改革法案の可決に政治生命を掛けていると言っても過言ではないPaul Ryanと同じウィスコンシン州の議員であることもあり、実際には最終的にRon Johnsonが反対票を投じると信じていた者は少なかったはずだ。投票直前にパススルー所得に対する控除額が増額されてSteve Dainesと共に賛成に回った。

次のDeficit Hawks派だけど、木曜日の段階では財政に与える影響を最小限とするため、経済成長率が予想通りの数値に到達しない場合には自動的に税率が上がるというクリエイティブな「Trigger」というメカニズムを導入することで解決を見たかのようにみえた。ところが上院先例専門委(Senate Parliament)がTrigger規定は予算調整法手続きの要件を充たさないと判断したことから他の方法で歳入を増やすこととなった。この歳入アップのためのイケニエとなったのがAMT廃案取り下げ、また、テリトリアル課税移行時の一時課税率だろう。一時課税率は上院案も結局、下院案よりも高い14.5%(事業資産に再投資されていれば7.5%)に変更されている。結果、Jeff Flakeは賛成となったが、一方のBob Corkerは反対票を投じた唯一の共和党上院議員となった。

オバマケアの個人に医療保険加入を強制する規定の撤廃は実質オバマケアの部分的廃案とも言えるが、これが上院税法改革法案に盛り込まれた点に関して、もともとオバマケア廃案そのものに慎重な態度を見せていたSusan CollinsとLisa Murkowskiは難色を示す可能性があった。Susan Collinsは上院案も下院同様に$10,000を上限に不動産税の個別控除を復活させた点を評価して賛成に、一方のLisa Murkowskiはアラスカ州ノース・スロープ自然保護区の油田開発が税法改革法案に追加されて点を評価(?)して賛成に回っている。みんな結構チャッカリ者な感じ。

そしてオバマケア廃案の最後の試みに引導を渡したJohn McCainだが、今回は財政委員会で法案内容に十分な議論が尽くされた点を評価してこちらも賛成となった。最後に、予算案決議で一人反対票を投じ、自宅の造園(?)で以前からもめていた近所の隣人に襲われて肋骨6本を折ったRand Paul先生も今回は賛成となった。 結局、造反容疑者リストから実際に反対票を投じた議員はBob Corker一名だったことになる。Bob Corkerは投票後に「できれば賛成したかった。両院一致案とする際にもう少し財政面からの配慮が加えられれば最終的には賛成もあり得る」としている。

これで下院、上院の両院で各々の法案が可決。いよいよ両院合同委員会による両院一致法案の作成を残すのみとなった。ここまで来て両院一致化のプロセスでコケないようにね。

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