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米国税法改正(Tax Cuts and Jobs Act)「Unplugged」(1) – BEAT(5)

ここまで4回に上るポスティングで、BEATの背景BEATの適用対象納税者Base Erosion Paymentの基本定義、そしてBase Erosion Paymentから除外される項目の代表となる売上原価に関して触れてきた。今回も引き続きBase Erosion Paymentから除外される項目に関してだけど、売上原価と違って法文上も「これはBase Erosion Paymentではありません」と明記されている項目に関して。

まず、Base Erosion Benefitから除外される項目として30%源泉税の対象となる費用項目が挙げられている。そりゃそうだよね。だって法人税21%に引き下げてるのに源泉税はそのまま30%に据え置かれている訳だから、30%取ってたら21%の税率でBase ErosionされてもIRSとしてはハッピーなはず。ちなみに法人税が35%から21%になったんだから、源泉税もせめて一律20%に引き下げるべき、って思っているのは僕だけだろうか?ここの議論は不思議と全然聞かない。

で、この30%源泉税対象の費用項目の除外の仕方はチョッと面白くて、Base Erosion PaymentではなくBase Erosion Benefitからの除外と規定されている点だ。BEAT目的の修正後課税所得もBase Erosion Benefit%も、その算定はBase Erosion Benefitに基づく訳で、Base Erosion Paymentという概念はBase Erosion Benefitを特定するための最初の一歩に過ぎない。なんでBase Erosion Benefitから除外されていれば実害はないと考えられるんだけど、30%の源泉税対象となっている費用項目は厳密に言えばBase Erosion PaymentではあってもBase Erosion Benefitではないということになる。多分、支払いの性格的に除外するケースはBase Erosion Paymentから除外し、Base ErosionによるBenefitが納税者側に経済的にないケースはBase Erosion Benefitから除外しているように見える。良く考えているというか複雑というか。

30%源泉税対象の費用項目は受け手の外国人側でECIとならないFDAPで、ロイヤリティ、利息がメインだろう。30%の源泉税は多くのケースで租税条約に基づき減免されるが、減免されている場合には費用全額をBase Erosion Benefitから除外することは認められない。30%との比較で減免されている部分に匹敵する金額相当の費用はBase Erosion Benefitとなる。例えば、受け手側でECIでない支払利息の源泉税が条約で10%だとすると(日本が受け手のケースはRand Paul先生のおかげで大概今でも10%だね)、本来30%なのに20%減額されて10%になっているので、支払利息の3分の2相当額はBase Erosion Benefitになる。なんか、旧Section 163(j)のDisqualified Interestの算定みたい、って思った人は正にその通りで、何と法文上も昔のSection 163(j)(5)(B)を参照するようにって書いてある。なんか、自ら廃案にしている条文を敢えて参照しているところが何か不思議。現時点では昔のSection 163(j)のことみんな知ってるし、旧条文も簡単に見つかるからいいけど、後31年とか経ってこの条文を見て「as in effect before the date of the enactment of the Tax Cuts and Jobs Act」って言われても何のこと言ってるのかパッと理解するのが難しそう。ちゃんとコピーでもいいから全文再度記載してあげた方が親切だったんじゃかないかと思うんだけど、余計なお世話かもね。

更に、旧Section 163(j)に言及して、急に思いついたのかその直後に新しいSection 163(j)で支払利息の損金算入が制限される場合のBEAT上の取り扱いに関して規定が設けられている。Section 163(j)はいつか詳細に触れてみたいと思うけど、制限の対象となる支払利息は関連者、非関連者からの借入を問わない。となると、損金算入に制限が加えられる場合、制限の対象となっている利息は関連者に対するものなのかどうかSection 163(j)だけをいくら読んでも分からない。なんでかっていうと総額で制限が加えられてその先どの利息が生き残っているのか、とか規定がないし、そんな規定の必要もないからだ。一方、BEATではBase Erosion Benefitは対象となる課税年度に外国関連者に支払った費用がいくら損金算入されているかの判定が重要となる。そこで、BEAT目的では、Section 163(j)で損金算入が制限されるケースではまず非関連者に対する支払利息が制限対象になっていると取り扱うよう「Ordering Rule」が規定されている。その結果、生き残って損金算入されている支払利息はできるだけ関連者に配賦されてしまい、BEATに抵触し易くできていることになる。ただ、ここでは関連者の中で外国関連者と国内関連者が共存する場合、どちらを先に扱うかは規定されておらず、そんな局面があるかどうかは分かんないけど、もしSection 163(j)が適用され、制限に抵触している一部に関連者からの利息があり、さらに国内外の関連者に支払利息がある場合には、扱いが明確でない。そんな事実関係になることはまずないんだろうけど、この規定の趣旨から行くと、制限対象となる利息は非関連者の次は国内関連者に割り振るのがそれらしい感じ。

次の除外は役務提供の対価のうち米国移転価格税制に規定される「Service Cost Method(「SCM」)」の適用要件を充たすものだ。法文の書き方から要件を充たしていれば実際にCostでチャージされているのかどうかは関係ないように見えるけど、ここは確認要。SCMは移転価格税制の財務省規則Section 1.482-9に詳細に規定され、その議論だけでも結構なボリュームとなる程細かい。Base Erosion Paymentからの除外目的では通常のSCMの要件となる事業成否リスクに大きく貢献するような役務であってはいけないという部分は無視してもいいとされる。更に、該当の役務提供の対価はマークアップ部分が含まれていてはいけない。で、これは前述の30%源泉税対象費用と異なり、Base Erosion Benefitではなく、Base Erosion Paymentの定義から除外されている。

で、最後の除外はこれもその規定の仕方が面白い。30%源泉対象費用はBase Erosion Benefitから除外、SCMの役務提供対価はBase Erosion Paymentの定義の部分で除外、で最後に来る3番目の除外は、そのどちらのSubsectionでもなく、別途、Base Erosion Paymentの定義部分の後に、対象納税者、関連者の定義をしているSubsectionがあり、その直後に議論を復活させるかのように独自のSubsectionをもって除外されている。これをなぜSCM同様にBase Erosion Paymentの部分に挿入していないのか謎。

その謎の3番目の除外は適格デリバティブ支出。これも法文的にはBase Erosion Paymentから除外される項目となる。Subsectionのタイトルは「EXCEPTION FOR CERTAIN PAYMENTS MADE IN THE ORDINARY COURSE OF TRADE OR BUSINESS」と大げさに始まるけど、実際には適格デリバティブのみ。このタイトルから「Ordinary Course of Trade or Business」に関するデリバティブだけの話しをしていることになる。

適格となるどうかの判断以前にここで何をデリバティブと扱うかと言うと、株式、債券、商品、為替、率、価格、取引量、インデックス、フォーミュラ、アルゴリズムなどの在来の取引法から派生しているオプション、先渡契約、先物取引、空売り、スワップ、および類似契約だそうだ。あくまでも前述の株式等の在来取引から派生しているものがデリバティブで、在来取引そのものはデリバティブではないとされる。ADRは株式扱いと規定されているので、ADRそのものはデリバティブではないが、ADRからの派生金融商品はデリバティブということになる。保険業に対する課税を規定したSubchapter Lの対象となる(または米国で事業をしていたら対象となるであろう)保険会社が発行する保険、年金保険、老齢保険はデリバティブではない。

で、「適格」デリバティブ支出だけど、税法上、課税年度末にMark-to-Marketに基づきみなし譲渡損益が「Ordinary」(Capital Gain・Lossではないということ)となり、かつデリバティブに基づく支出から発生するGain、Loss、Income、Deduction全ても「Ordinary」扱いになるもの、と規定されている。また適格デリバティブとなるためには財務省が今後定める規則に基づき、支出にかかわる開示が必要となる。

しかし、このデリバティブ支出のBase Erosion Paymentからの除外に関しては重要な例外があり、デリバティブに基づいて行われていなければBase Erosion Paymentとなるロイヤリティー、利息、役務提供対価、等に関しては利用できないそうだ。またデリバティブとデリバティブでない支出が混在している場合には、デリバティブ部分のみが適格デリバティブになり得るとも規定されている。

という訳でだいたいBase Erosion PaymentとBase Erosion Benefitsはカバーしたので、次はBase Erosion Benefits %、そして通常の法人税との比較等に関して。